私は筋金入りのアップル愛好家ですので、伝説の創業者であるスティーブ・ジョブス氏が先日亡くなったことをとても残念に思います。ジョブス氏には数々の逸話がありますが、私を惹きつけてやまないのは、彼が失敗から見事に立ち上がっていく話です。自分が採用した経営者によって、自分が手塩にかけて育てたアップルから追い出されてしまうという大失態を犯すのです。けれども、腐らずに奮闘努力をした結果、その間の成果を古巣に買い取らせる形で、見事なカムバックを果たします。その後の成功は誰もが知るところです。
会社を飛躍させるために自分が雇った人間にクビにされてしまうなどということがどうして起きたのでしょうか。氏の卓抜した能力がゆえにエッジが効きすぎていて、経営陣から煙たがられてしまったのでしょうか。会社が大きくなるにつれて、数字を追求することに汲々としてしまい、本人の感性を押し殺すことで初心を忘れてしまったツケが回ってきたのではないかと私は臆断しています。ちなみに、氏は、この時の顛末を「レンガで頭を殴られたような」気分と述懐しています。
氏はアップルに復帰した後に、Think differentと名付けた一連のキャンペーンで、ガンジーやジョンレノン、キング牧師といった歴史上の人物を並べて「クレイジーな人たち」が世の中を変える、という広告を打ちました。この中には、過去の失敗に対する反省−理想を追求する手を決して緩めてはいけない−が込められているのではないかと考えます。まさに、出る杭は打たれるが出すぎた杭は打たれない、と言わんばかりです。そして、最終的に氏の理想がiPhoneやiPadに結実し、氏の先見性に消費者の志向が追いつく瞬間がついにやってきたのだと思います。
さて、私のような凡人が、天才の真似をしようとも限界があるのは目に見えていますが、少なくとも氏から学ばなければいけないことは、どんな逆境に立たされようとも自分の仕事に誇りと情熱を持ち続けよう、ということだと思います。日本が一丸となって国難から立ち上がろうとしているいま、自分の使命を見つめ直して日々の仕事に強い意志をもって取り組んでいこう、創造性に富んだ稀代の天才の訃報を耳にしてそう思いを新たにした次第です。
2011年10月11日
出過ぎた杭は打たれない
posted by 村越ひろたみ at 16:00| 閑話休題