2014年03月05日

アベノミクスの間断無き検証を

安倍総理が就任して1年強が経ちました。政治の重責のひとつが先の見通しのきく社会をつくることにあるのだとすれば、景況感がなんとなく良くなった気がするという点でアベノミクスがもたらしたインパクトは大きかったと思います。しかし、アベノミクスが正しい政策だったのか足をひっぱる意味ではなく健全な視点で監視をし続けなければいけないと考えます。

問題はアベノミクスが当初の目的を果たしていないということです。アベノミクスの狙いは、円安に誘導することで輸出分野を復活させ、製造業の空洞化を阻止するということにあったはずです(第一の矢)。しかしながら、輸出は数量ベースで停滞したままで空洞化に歯止めはかかっていません。経済は消費と投資と輸出を合わせたものですから、経済成長の度合いはそれぞれの増加分に左右されます。輸出が伸びず、消費も増税前の先食い分だけで期待ができないとなると、自民党お得意の公共投資の出番となります。昨年の名目成長率1%達成に最も貢献したのは13%も増やした公共投資です(第二の矢)。しかし、公共投資に大盤振る舞いして有効需要を創出する方法が財政赤字という負の遺産をもたらすことを忘れてはなりません。

大事な事は、成長戦略の中身をどうするか(第三の矢)ということに尽きると考えます。横道に逸れますが、2020年の東京オリンピックに向けてどのように選手を育成すればよいかということに関して、スポーツジャーナリストの二宮清純氏が興味深い発言をしています。すなわち、トップの選手におカネをかけることよりも、競技者全体の裾野を広げる視点が一番大事であり、メダル獲得に近道はないとのことです。この話は大変示唆に富んでいると思います。経済財政政策に関しても同様の事がいえるでしょう。対症療法的政策を繰り返すばかりではなく長期的な視点に立って日本の産業構造を転換し、技術革新を促進するための次世代育成支援に力点を置きつつ財政赤字を減らす努力をするということだと思います。

脱原発を成長戦略の中心に据え着実に進めることで再生可能エネルギーを一大産業に育てて新たな雇用を生み出す、また、農地や農家を守るための農政ではなく日本の食の安全保障を担保するためにも農業を産業化することが不可欠だと考えます。公共投資ばかりではなく子育て支援や教育に力を入れ、国民の将来の不安を払拭するための長期的なビジョンをもって経済政策を考えるべきではないでしょうか。
posted by 村越ひろたみ at 15:11| 政治放談